他の誰の想いを知っても、君だけは手離せない。 誰にも渡さない。 02.この想いだけは譲れない 「俺失恋したのかも」 「…え?」 「最近さ、雪菜さんの様子がなんか変だなーとは思ってたんだけどよ…」 「どうかしたんですか?」 「…好きな人ができたって言ったんだ…」 「それは…」 「オメェなんか知らねェか!?」 「いえ、特にはなにも…ごめん」 ごめん。 彼の方が先に好きになっていたのに。 彼の想いを知っていたのに。 もう手離せない。 諦められない。 付き合っていることは誰にも言っていなかった。 ふたりだけの秘めごと。 彼女は気恥ずかしさから。 俺は罪悪感から。 誰にも知られずに、静かな時を過ごすだけ。 だけど、それだけで幸せなんだ。 誰かのために離れられるほど、優しくはないよ。 「蔵馬さん」 「ん?」 「このあいだのお店可愛かったですね」 また行きたいです、そう笑う彼女がなによりも愛しくて。 気がつけばいつも手を伸ばしてしまう。 「…く、くらまさん…」 いつも無邪気な彼女が、この瞬間だけは頬を染めておとなしくなる。 こんな可愛い彼女を知っているのは、ただ俺ひとり。 「…俺は卑怯なのかな」 誰かの思いを踏みにじってまで手に入れた。 だけど。 「君を手離すことはできないから」 そのつぶやきに、彼女はただ俺に微笑みを向けた。 どうしたって、この想いだけは譲れない。 ---------------------------------------- 蔵馬さんは、初めは雪菜ちゃんのことを可愛い年下の女の子程度にしか思ってなかったんだけど、 気づいたらのめりこんでればいいと思います。 あれ、こんなに本気になるなんて、とかちょっと途惑ってればいいと思います。 スイマセン、妄想なので許して(笑) 2007*0905 戻 |