追いかけて追いかけて追いかけ続けた。 そして私は、なにを手に入れた? 03.何度も掴もうと必死すぎて 「幸せがほしかったんです」 唐突に話し始めた雪菜に、隣に座っていた飛影は視線を移した。 「家族も愛情も自由も」 「……」 「ほしいものだけはたくさんありました」 雪菜は目を伏せて、そして微笑った。 「だけど、全部が裏目に出てしまって…」 待ち受けていたのは苛める現実。 不条理な冷たい暗闇。 慣れてしまうほどの苦痛に、痛みを感じなくなった心。 「追いかければ追いかけるほどすべてが遠くなっていきました」 心を捨てなければ張り裂けそうだった。 希望を捨てなければ崩れ落ちそうだった。 願いは、持っていてはいけないと思った。 「必死すぎる私には…なにもありませんでした」 すべてを必死に掴もうとして。 なにも残らなかった。 手を伸ばすことにさえ臆病になっていく。 雪菜は、右隣に座る飛影の左手を見た。 床につかれたその手は、大きく、とてもしっかりした手だった。 この手をずっと掴みたかった。 導いて守ってくれる優しい手を。 必死で追い続けた最後の砦。 だけど、踏み出せないで、掴めない。 「私の未来はどこにあるんだろう、ってときどき思うんです」 「…まだ辛いのか?」 「……少し」 背負いすぎた痛みは消えないまま雪菜に残っていた。 それらすべてを平気だと言えるほど強くはない。 「…お前は、大丈夫だ」 「!」 優しい大きな手がくしゃりと頭を撫でた。 「お前はとっくに全部手に入れてるだろ?」 家族も愛情も自由も、幸せも。 「お前の傍には俺がいる。 だから」 何度も掴みたかったその手が、そっと雪菜を引きよせた。 「安心しろ」 もう泣かないと決めていたのに。 雪菜は飛影の温もりに包まれながら、頬を伝う涙を止められなかった。 ------------------------------------------ やっぱり飛雪はどうしてもほのぼのが書けません;; 絶対シリアスになる…。 飛雪の雪菜ちゃんは天然少女にならないんですよね、どうしてでしょう…シリアスが勝ってしまいます。 天然雪菜ちゃんに飛影が振り回されるような話を書くのが目標です、はい。 でも、シリアスなお題を選んだので、今回は無理(笑) 2007*0909 戻 |