仕事から帰ってくると部屋の灯りがついていて、温かい食事ととびきりの笑顔が待っている。
どんなに疲れていても、そんなものはすぐ吹き飛んでしまう。

だって、誰よりも君が愛しいから。





07.誰よりも愛しい





「ただいま」
「おかえりなさい!」

ぱたぱたと駆けてきた彼女は、何度見ても飽きないエプロン姿。
玄関先で抱きしめたくなるのは、相当俺がハマっている証拠。
赤くなって彼女が動けなくなるのを知っているから、不意打ちはしないと決めているけど。
でも、たまにするのは否定しない。





「最近夜は涼しくなってきましたね」
「もう秋だからね」
「風邪ひかないように気をつけてくださいね」

私は寒いの平気ですけど、と彼女は笑った。

「風邪ひいたら看病してね」
「もちろんです」

そんな笑顔で言われてしまっては、風邪をひくのも悪くないと思ってしまう。





「今日の夕飯なに?」
「オムライスです!」
「ホント?それは楽しみだな」



鍵は渡してあるけど、同棲はしていない。
桑原家から彼女を奪うことはできないし、第一、そんなことをしたら桑原くんに殺される。

彼女が来るのは毎週金曜日。
いつも夕飯を作って待っていてくれる。
それが楽しみで毎日働いていると言っても過言ではない。





「ごちそうさま。今日もおいしかったよ」
「ありがとうございます!今日も頑張りました」

そう言って笑う彼女と一緒に食器を片づけて、
いつものようにソファにかけてゆったりとした夜を過ごす。





俺たちの恋愛はゆったりペース。
それでいいと思ってる。

大切にしたいから、焦ることはしない。
そもそも、焦って先走るほど若くはない。

まぁ、それでも、我慢の限界というものは存在するけど。





隣に座っている彼女を引き寄せると、一瞬驚いたような素振りを見せたが、
すぐに甘えて俺に身体を預けてくれる。
額に、まぶたに唇を落とすと、彼女は俺を見上げて、そして静かに瞳を閉じた。

それが合図で。

甘く、優しく口づける。
あまり長いと、彼女は服を握りしめて小さく抵抗してくる。

その姿見たさにしていることもあるけど、なるべく気をつけるようにはしているつもり。



そっと唇を離すと、彼女は呼吸を整えながら、上気した頬を隠すかのように俺の胸に顔を埋めた。
その行動があまりにも可愛くて、奪われそうになる理性を必死で抑える。


「…いつまで持つかな、これ」
「え…?」
「ううん、なんでもない」
「?」


見上げて首を傾げるその姿が、また理性を奪うのだと気づいてくれればいいのだけど。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、俺に抱きしめられたまま、彼女はぽつりとつぶやいた。


「蔵馬さん」
「ん?」
「ずっとこうしていたいですね」
「…!」





…ごめん、今日は無理かも。










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蔵馬さんが恋する乙女だ(笑)(お前)
雪菜ちゃんに対していつもメロメロでいてほしいですvv
てか、雪菜ちゃんの可愛さに勝てる人はいないと思うの!(力説)
果たして蔵馬さんは理性を保てたのか…(笑)
2007*0924