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君は俺の気持ちなんてこれっぽっちも知らないんだろうね。
こんなに想ってるのに。

いつになったら気づいてくれる?





09.何度も願うよ、貴方が振り向くまで





「今度の土曜日あいてる?」
「特に予定はありませんけど…」
「じゃぁ、ドライブでも行かない?」


そう言った俺に笑顔で答えた君は、きっとなにもわかってないんだろう。
どうして誘ったのか、なんてこれっぽっちも。


電車通勤のためにあまり乗らない車は綺麗なままで。
君を乗せるのに相応しい、なんて思ったりもして。
きっと、この車の助手席は君のための席。


「どっか行きたいところある?」
「えーっと…」
「なかったら適当に走るけど」
「あ、夜景…夜景見たいです!」
「夜景?」
「ダメですか…?」
「いや、いいんだけどさ、まだ朝…」
「……あ」


気づいた彼女が、そっか、と心底納得したような顔をした。
それが面白くて、可愛くて。
やっぱり好きだと自覚した。


「じゃぁ、夜景は夜見に行くとして…」
「連れてってくださるんですか?」
「いいよ。帰りが遅くなっても怒られないならね」
「大丈夫です。静流さんが今日は朝帰りでもいいって」
「……それは…」


首を傾げている彼女に俺は苦笑せざるを得なかった。
まだ付き合ってもいないのに、朝帰りだなんて…静流さんはなにを考えてるんだか。
とりあえず、静流さんには俺の気持ちはバレているということは確実らしいけど。
というか、たぶん、気づいてないのは彼女だけなんじゃないかと思う。


「夜景、どうしても見たかったんです。蔵馬さんと」


そう言って彼女が笑うから、俺は目を見開いたまま彼女を凝視してしまった。
しかし、すぐ運転中だということに気づいて視線を前に戻す。
どきどきしてる心臓と、自覚のないであろう彼女と、朝の道をただひたすら走った。





「…で、結局これからどこ行く?」
「そうですね…」
「俺の考えたコースでもいい?」
「はい!お任せします」
「途中で行きたいとこ思いついたら言ってね」
「はい」


彼女は終始笑顔で、楽しんでくれてるんだと嬉しく思った。
どこに連れて行っても新鮮そうな表情をしている彼女を見ているとこっちまで嬉しくなってくる。
彼女といると見慣れたものでもなんでも真新しく見えて、楽しいことばかりだ。



彼女との関係がこれ以上発展しなかったとしても、それでもいいのかもしれない。
こうやって傍にいられれば、それ以上は望まない。
たまに会ってふたりで出掛けて。

だって、それで、十分デートみたいなものじゃないか。



俺の気持ちに気づいてくれなくても、俺が好きでいればそれでいい。





「綺麗…!」
「この辺じゃいちばん綺麗な夜景だよ」
「ありがとうございます!見れて嬉しいです」


一面に広がる夜景が、俺たちを包むかのように輝いている。
綺麗な夜景にふたりで肩を並べて魅入って、今日の楽しかった思い出を想い返した。


「今日はありがとうございました」
「いえいえ」
「任せっきりでごめんなさい…デートスポットとか全然思いつかなくて…」
「いいよ、別に……え、デート?」
「違うんですか?」


きょとんと彼女は俺を見た。
きょとんとしたいのは俺の方だ。


「…いや、間違っちゃいないんだけど…」
「静流さんが教えてくれました」
「あぁ、静流さんね…」


またあの人は彼女になにか吹き込んだらしい。
毎回彼女を通して俺がからかわれてるんじゃないかという気がする。


「ちなみに、デートの意味わかってる?」


そう訊くと、彼女はただ微笑っただけだった。





帰りの車で、疲れたのか彼女は眠ってしまって。
そんな彼女の寝顔を見ながら、俺は想いを巡らせた。







もしかしたら、本当は、気づいていないのは俺の方なのかもしれない。










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本当は振り向いてほしいと願っていたのは雪菜ちゃんの方だったのかも。
乙女モード全開一歩手前の雪菜ちゃんです。もっと自覚したらもっと乙女になります(笑)
蔵馬さんと雪菜ちゃんはほのぼのな感じでらぶらぶしててほしいですvv
妖怪には心臓はないけど、蔵馬さんは身体は人間だし、心臓どきどきしててもおかしくないですよね…?(笑)
2007*1001