甘えていいよ




「雪菜ちゃん」
「はい?」


ああ、やっぱりこの感じ。
最近少しわかるようになった。


だから、黙って引き寄せた。


「…! 蔵馬さん…?」
「もっと甘えてくれればいいのに」
「…え?」
「最近やっと見分けられるようになったんだ」
「あの…?」
「本当の笑顔と無理した笑顔」
「…!」
「なにかあった?」


甘えてくれていいんだよ。
そのために今ここにいるんだから。


胸に顔をうずめただけで、なにも言葉を紡がなかったのが、とても彼女らしいと思った。






2008*0120