雨に濡れる君は見たくないよ(パラレル)




完全下校を告げる鐘が鳴り響いていた。


降りしきる雨の中、昇降口で立ち尽くす影を見つけた。
雨を見上げる憧れの姿。


「傘ないの?」
「え…あ、はい」
「これ、よかったら使って」
「でも…」
「俺、迎え来るから」


なおも渋る彼女に、無理矢理青の傘を差し出した。


校舎で何度か見かけたことがあるだけで、面識なんて全然ない。
でも、ただ、雨に打たれる彼女を見たくなかった。


「すごい雨だし、濡れたら困るでしょ」
「…ホントにいいんですか…?」
「うん、使って」
「じゃぁ、ありがとうございます…」


遠慮がちに受け取った彼女と、一瞬触れた手。
彼女は戸惑いながらも笑顔を見せて去って行った。


雨に濡れるくらいなら、俺の傘に守られて。


差し出した真っ青な傘と、とっさについた真っ赤な嘘。
雨の道を濡れながら走って帰った。






2006*0912