あったかい




「寒っ。」


冷たい風が吹いたと同時に、蔵馬がそうつぶやいた。
傍にいた雪菜は、慌てて自分の赤いマフラーを蔵馬の首にかけた。


「どうぞ…! 私は寒くないですから。」
「ありがと。」


温もりと優しさとともに巻かれたマフラーに、蔵馬は触れた。
それは、とても温かい。


寒さが平気な雪菜にとっては、飾りでしかなかったらしい。


「どこか暖かい場所に行きますか?」
「うーん…あ、でもこの方があったかいかも。」
「え…?」


不思議そうな顔の雪菜を引き寄せて、蔵馬はその腕の中に閉じ込めた。


「く、蔵馬さん…!」
「ん?」
「あの、私…体温低いですよ…?」


雪菜が照れながらも気遣ってそう言うもんだから、
蔵馬は思わず笑ってしまった。


「大丈夫。 あったかいよ。」






2007*1206