eve 「クリスマス、パーティーするんです」 にこにこと彼女が嬉しそうにそう言った。 クリスマスには家族で集まってパーティーをするのが桑原家の習慣らしく、 彼女は毎年それをとても楽しみにしていた。 華やかな飾りや、幻想的なイルミネーションは、彼女にとって珍しいものであり、 なにより、クリスマスという夢のようなイベント事に感動すら覚えているようであった。 もしかしたら、サンタクロースの存在も、彼女ならば信じているのかもしれない。 「サンタさんにはなにお願いしたの?」 「まだ決めてないんですけど…」 「早く決めないとサンタさんも困っちゃうよ。」 「そうですよね…あ、でも、煙突ないのに、 毎年どうやってプレゼントを届けに来てくださってるんでしょう…?」 「…換気扇?」 「え…!? …サンタさんって何者なんですか?」 真剣な彼女に、自分も真剣に答えようと思ったが、 なかなかいい答えが出て来なかった。 「クリスマスパーティー楽しんでね。」 「はい! …あ、蔵馬さんはお仕事なんですよね…?」 「うん。 平日だからね。」 「ごめんなさい…なんか浮かれてて…」 「いいよ、別に。」 なぜだか異様に旬としている彼女がおかしくて仕方なかった。 クリスマスを楽しみにしている彼女が可愛くて仕方ない。 「その代わり…」 「?」 「イヴはちゃんと空けておいてね?」 「イヴって…24日ですよね?」 「うん。 俺とのクリスマス。」 「…! はい!」 にこにこと、また彼女は笑顔になった。 初めて過ごす彼女とのクリスマスは、いったいどんなものになるのだろう。 考えるだけで、楽しみで仕方ない。 一足先に、ふたりだけのメリークリスマス。 2007*1224 |