君が傷つくだけだから




愚かだとは思わない。 だけど、君が傷つくだけだから。


油断していたあなたの身体を押し倒した。


「雪菜ちゃん…?」


困惑した声に聞いていないふりをして、シャツのボタンに手をかけた。
見た目以上にしっかりした身体に唇を落とす。


「…雪菜ちゃん、ちょっと待っ…!」


言い終らないうちに唇をふさいだ。
抵抗しようと思えばできるはずなのに、されるがままになっている。


こんなことで繋ぎ止められると思う私を笑わないで。
愚かだと思われてもいい。
だって、もう知ってるの。
永遠の愛なんてない。


唇をそっと離して自分の服を脱ごうとすると、
彼は勢いよく起き上がってそれを止めた。


「…なにしてるの。」
「愛の行為?」
「……そんな哀しそうな顔で言われても説得力ないよ。」
「…だって…。」
「こんなことして確かめたくても、俺はあなたを愛してますよ。」


黙り込んだ私を、彼は引き寄せて抱きしめた。
肌が直接頬にあたって、温もりと鼓動を感じた。


「…どうしたらあなたがもっと好きでいてくれるんだろうって…。」
「……。」
「どうしたら繋ぎ止めておけるんだろうって…。」
「だからこんなことしたの?」
「…ごめんなさい…。」


好きすぎて背負えない。


「俺の気持ちは、そんなに信用ないのかな。」
「そんなことないです…! …でも…。」
「でも?」
「…永遠の愛なんてないでしょう?」


愚かだと思われてもいい。
勝手に想像した終わりに、勝手に怯えてるの。
だって、それくらい好き。
好きすぎて、つぶれてしまいそう。


だから、心底呆れたような顔を見たとき、安心したの。


「そんな気もしない未来のことなんて考えないで、今の俺だけ見てて。」






2006*0824