キスよりも満足できること




「蔵馬さん。」
「なに?」
「私、キスだけで満足できるほど、もう子どもじゃないんです。」
「げほっ!!」
蔵馬は飲んでいたコーヒーを盛大に吹き出した。


「大丈夫ですか?」
「…いや、ちょっと、びっくりしただけで…。」
「まさかこんなに驚かせるとは思ってませんでした。」
「…えーっと、その、なんだって?」
「ですから、キスだけで満足できるほど」


蔵馬は思わず雪菜の口を手でふさいだ。
どうやら聞き間違いではなかったらしい。


「…どうしたんですか、いきなり…。」
「私なにかおかしなこと言ったんですか?
 そう言えば面白いことになるって幽助さんが。」
「…幽助のしわざか…。」
満足そうに笑っている幽助の顔を思い浮かべると、蔵馬は無性に腹が立った。


「ねぇ、蔵馬さん。」
真剣な雪菜の表情に、蔵馬は嫌な予感がした。
「キスよりも満足できることってなんですか?」
「……。」
それをどう教えろと。






2006*0820