選ぶことはできなくても 「幽助や飛影と戦うことになるかもしれない。」 「…え?」 「今は敵だから。」 「だって…そんなの…。」 「勢力争いに関わってしまいましたからね。」 「避けられないんですか?」 「…さぁ。」 「さぁって…。」 「望まない戦いっていうわけでもないですし。」 「…そうなんですか?」 「俺たちは戦闘バカですからね、基本的に。」 「…私は、嫌です。」 「うん…言うと思った。」 「ただのケンカではないのでしょう…?」 「感覚的には同じですよ。 国が懸かっているか懸かっていないかの違いで。」 「その理屈が、わかりません…。」 「心配することはなにもないっていうことですよ。」 「…心配、しますよ…。 するに決まってるじゃないですか。」 「誰のことが心配?」 「……。」 「あなたは誰に勝ってほしい?」 「!」 見開いた雪菜の瞳を蔵馬は覗き込んだ。 紅い瞳が困ったように揺れた。 答えなんて初めからわかっているのに。 「ごめんね。 意地悪な質問でしたね。」 「……いえ。」 「そろそろ戻りますよ。 今日は様子を見に来ただけですから。 彼らのこと、お願いしますね。」 背を向けて去っていく蔵馬の後ろ姿を雪菜は見つめた。 そして、気づいたときには、その背中に声をかけていた。 「あのっ…!」 驚いて蔵馬は振り返った。 夕陽に照らされた雪菜がこちらを見ている。 「…がんばってください…!」 雪菜の声に蔵馬は微笑を見せた。 ありがとう、と呟いて、背を向けてまた歩き出した。 選ぶことはできない。 だけど、あなたにがんばってほしい。 2006/11/05 拍手掲載 2007/03/10 再掲 戻 |