テーブルの上にある見慣れない箱を雪菜は手に取った。
それをまじまじと見つめる。
この部屋には不釣合いだと、雪菜は心底思った。






煙草







「蔵馬さんって煙草吸いましたっけ?」
「ううん。」
帰ってきた即答に、雪菜は不思議そうな顔をした。
「…ああ、それは、なんとなく吸ってみたい気分になって。」
でも、やっぱ吸うもんじゃないね、と蔵馬は苦笑した。




「…吸ってる姿、すごく似合いそう…。」
「やめてよ。 そんなこと言われると調子乗って吸っちゃうから。」
蔵馬が笑うと、雪菜は焦ったように訂正した。
「あ、ごめんなさいっ…!
 やっぱり身体に良くないから吸わない方がいいと思いますっ…!」
「はい。」




くすくすと笑いながら蔵馬は返事を返した。
必死な雪菜がなんだかおかしい。




蔵馬は笑顔のまま手を伸ばした。
雪菜の手を一瞬握って煙草の箱を取り上げる。




「それに、キスの味もまずくなるしね。」
「そうですね…って、え、あのっ…!」




真っ赤になった雪菜を横目で見ながら、蔵馬は煙草の箱を放り投げた。




「…なーんてね。」




煙草の箱がゴミ箱に入るのを見届けてから、悪戯っぽく笑って口づけた。




















2006/09/02 拍手掲載
2006/11/25 再掲