照りつける太陽の下。 今ここにあなたはいない。 遠くの地で 「みなさん、そろそろ休憩したらいかがですか?」 結界で護られた道場の扉を開けて、雪菜はそう言った。 緊張していた空気が解れ、皆雪菜の方へと視線を向けた。 「飲み物持ってきましたよ。」 「おぅ、気が利くじゃねェーか!」 「蔵馬さんの特製ジュースです。」 「げ。」 見事に全員がハモったことに苦笑せざるを得なかった。 「…あの、そんなにおいしくないんですか?」 「おいしくないなんてもんじゃないぜ! 毒だ毒っ!」 「あんたが作ってるんだろ? 途中で味見とかは…しないか。」 「はい。 蔵馬さんと幻海さんに止められてるので…。」 「1回飲んでみたら俺たちの気持ちがわかるよ。」 「やめとけ、鈴駆。 俺たちが勧めたなんてバレたら殺されるぜ。」 「でも、この味は殺人的過ぎるべ?」 「確かに…。 もっとおいしくしてくれるとありがたいな。」 「はい…! が、がんばります…っ!」 「味を知らない彼女にそんなこと頼んでも無駄だろう。 諦めろ。」 「ホントにお前はクールだなぁ〜。 我慢できるってのかよ。」 「強くなるためならな。」 「俺も同感だ。」 「げ、死々若まで!?」 「強くなって恨みを晴らす。 それ以外にない。」 「そりゃ、強くはなりたいけどよ…。」 「なにちんたらしてるんだいっ!!」 「!!」 「さっさとそれ飲んで修行続けなっ!!」 道場の中に幻海の怒声が響き渡った。 皆慌てた様子で特製ジュースを口にした。 その顔はもちろん青い。 しかし、なんだかんだ言って一気に飲み干してしまう姿を、雪菜は呆気にとられて見ていた。 強くなるために。 戦うために。 修行を再開した皆の姿を見ながら、やはり自分はこういうことは苦手だと雪菜は思った。 だけど、見守っていたい気もする。 生き生きとしている。 そんな気がした。 雪菜は道場の外へ出て、空を見上げた。 照りつける太陽が、眩しいくらいに輝いている。 共に戦った戦友たちが、別の道を歩み始めた。 互いが戦う道を選んだ。 敵か味方か。 それすらも危うい道を、彼らは選んだのだ。 きっとみなさんは後悔していないと笑うのでしょう。 仕方がないのだと、困った素振りすら見せずに言うのでしょう。 みなさんが戦うことを選んだことを私が理解できないように、 私が戦わないでと叫びたくなる気持ちをみなさんは知らないのでしょうね。 なにもできずにここにいる私は、ただ無事でありますようにと祈ることしかできない。 どんな結末になっても、それは本望だったとあなたは言うのかもしれない。 だけど、私はきっとそれを受け入れることなんてできない。 みなさんがまたそろって目の前に現れてくれることを私は願うだけ。 そう、だから今、ここにあなたはいない。 2006/11/05 拍手掲載 2007/03/10 再掲 戻 |