火傷 -This is my crime- いつも見て思い出す。 あなたのこと。 「前から思ってたんだが…消さないのか? それ。 治せるだろう?」 「…いいんです。 これは…私の罪の証。」 「罪…?」 「………。」 「…そうか。」 白い腕にはっきり残る、火傷の痕。 甦るのは、忌まわしい過去と過酷な痛み。 でも、それだけじゃない。 あの人の命を奪ったのは、私。 私を逃がしてくれようとした、優しい人だったのに。 あの人の笑顔に、何度も救われたの。 なのに。 私は。 私のせいだとは、誰も責めないかもしれない。 優しいあの人は、私を責めないかもしれない。 でも、私は、私を責め続ける。 私は私を、赦せない。 赦さない。 優しかったあの人だけが、あのときの私の救いで。 優しかったあの笑顔だけが、あのときの私の癒しで。 優しかったあの言葉だけが、あのときの私のすべてで。 あなたしかいなかったの。 あなたしか、いなかったのに。 この腕の火傷は、過去を忘れないため。 私の罪を、忘れないため。 火傷がなくても忘れることなどありえないけれど。 でも、だからこそ、この身体に刻むの。 一生、消しはしない。 ひとりでは抱えきれないかもしれない。 でも、口にするのは、まだ怖い。 「いつか話したら、聞いてくれますか。」 「…当たり前だ。」 2006/05/25 拍手公開 2006/09/23 再掲 戻 |