始まった文化祭
2日目と最終日にも君がいる ![]() Scene13:「2nd day-final day」
「きゃー!南野先輩ー!!」 「かっこいー!!」 「写真撮ってもいいですかっ!?」 文化祭2日目。 1年6組の教室では黄色い声がとびかっていた。 王子様効果は絶大で、カフェは大繁盛している。 当の秀一は、困惑しながらも営業スマイルを絶やさずにいた。 「やっぱ、すごい人気ですね」 「…みたいだね」 雪菜の言葉に秀一は他人事のように苦笑した。 まさかこんなにも集まるだなんて。 「でも、男子のほとんどは雪菜ちゃん目当てだろうけど」 「まさか。そんなことないですよ」 無自覚な雪菜に、秀一はさらに苦笑した。 「オーダーお願いしまーす!」 秀一に向かって黄色い声が飛んできた。 それに秀一は笑顔で応える。 「休憩時間は一緒に回ろうね」 小声でそう言い残して、秀一は客の方へと向かって行った。 残された雪菜は頬を赤らめて、秀一の後ろ姿を見つめた。 そして、ふと我に返って、雪菜もまた仕事へ戻った。 中等部の校舎で行われた1日目の文化祭も、雪菜は秀一と回った。 今日のための準備があったので、あまり長くはいられなかったが。 自分の気持ちは確かに伝えた。 でも、秀一の気持ちがわからない。 どんな返事でも、はっきり言ってくれればいいのに。 秀一が傍にいてくれることを雪菜は手放しで喜べすにいた。 「白鳥さん」 呼ばれて振り返ると、そこには三谷がいた。 「ウェイトレス姿見に来たよ。友達として、ね」 やわらかく笑った三谷に、雪菜も笑顔になった。 「すごい繁盛してるね」 「はい!楽しんでいってくださいね」 普通に話ができる。 それだけで満たされることってあるんだ。 カフェは客が絶えることなく大忙しだった。 もちろん、客寄せのおかげだけではなく、コーヒーやお菓子が美味しいからである。 1年6組の誰もがこの大繁盛に喜んだ。 カフェは大成功したのだ。 「お疲れ」 「お疲れ様です」 「忙しかったね…」 「でも、楽しかったです」 「カフェはこれで終わりだし、午後はいろいろ回ろっか」 「はいっ!」 秀一と雪菜は高等部の校舎を一緒に回った。 ひとりでいてもただでさえ目立つのに、ふたりでいるとなおさら目立った。 だけど、そんなこと気にならなかった。 一緒にいられるのがただ嬉しい。 それだけだった。 「明日で文化祭終わっちゃいますね…」 「うん。あっという間だね」 「でも、明日の舞台発表は楽しみです!」 「そうだね。…楽しみにしてて」 「え?」 雪菜は意味がわからず聞き返したが、秀一は微笑んだだけだった。 秀一はいつもどこかつかみどころがない。 雪菜はそう思った。 答えは明日わかるのか。 それともずっとわからないままなのか。 考えてもしょうがないことを、考えた。 「みんな盛り上がってるかー!?」 文化祭最終日。 中高共同の舞台発表のオープニングを飾ったのは、軽音部の大人気バンドだった。 生徒のテンションはおかしいくらいに上がっていく。 この学校は、勉強にうるさいが、それだけではなく、何事にも全力勝負をスローガンに掲げている。 だから、どの発表も渾身の作品だった。 ブラスもダンスも演劇も、どれもユニークで素晴らしいものだった。 毎年恒例の人気投票では、予想通り秀一が総ナメ状態だった。 もちろん、美人な人ランキングは今年も1位だ。 2位には雪菜の名前もある。 異様なまでの盛り上がりを見せる文化祭で、ついに大目玉の告白大会が始まった。 このイベントには参加者が毎年多い。 結ばれるカップルは少ないが、だからこそ、このイベントで結ばれたカップルは 永遠の愛を誓えるというジンクスまである。 雪菜は始まった告白大会を見ながら、内心早く終わらないかと思っていた。 秀一の昨日の言葉が気になってしょうがない。 もしかしたら、文化祭が終わったあとに何かあるのかもしれない。 朝から1度も会えなかったから、話すらできていない。 なにをしていても秀一のことを考えている自分に呆れてしまう。 だけど、呆れるくらいにどうしようもなく秀一が好きだった。 雪菜は告白大会に、何度か告白される側として出たことがあった。 告白を断るのは、ただでさえ申し訳ない気持ちになるのに、 全校生徒の前でだなんて、さらに気が重い。 しかも、突然指名されるので、心の準備すらする暇もないのだ。 ちなみに、このイベントで秀一が指名を受けたことはない。 公の場で告白しようものなら、学校の女子ほとんどを敵に回すことになるからである。 秀一の言葉ばかりを気にしている雪菜には、正直告白大会なんてどうでもよかった。 “楽しみにしてて” なにを楽しみにすればいいの? なにが私を待ってるの? ----------------------------------- 本当はここで切りたくなかったのですが、量的に長かったので…。 サブタイトル、仮タイトルのままで結局いいのが思い浮かばなかった…(笑) 文化祭の話飛ばして書きすぎですよね(苦笑) でも無理でした(オイ) 2006*1128 12/戻/14 |